猫の靴下屋

小人の靴屋という童話がある。確か、靴屋に小人が住んでいて、夜になると作り掛けの靴を手掛けて、完成してくれるお話だ。結末は2種類は知っていて、ひとつはお礼に綺麗な衣装を用意してあげると、それきり手伝ってくれなくなるというもの。もうひとつは、同じお礼をしたら、その後は仲良くする、というもの。童話が子供向けであったとしても、今と社会情勢が異なる時代には、何を面白いと感じるかが異なる。戦争や死刑や流行病など、今より死が身近だった時代には、登場人物との別れやその死は然程残酷とは受け入れられていなかったかもしれない。

さて、うちの靴下屋は、衣装ダンスの引き出しから、咥えてきたり、手でホッケーのように叩いて進めたりしながら、靴下を運んでくる。縫ってくれたり、繕ってくれるわけではない。時間帯は決まって夜。夜に鰹節をあげる前に、挨拶がわりに持ってくるようだ。食後にも、お礼のつもりか、また持ってくることもある。

なぜこのような習慣が身についたのか、分からない。私たちが朝に履くので、真似しているだけかもしれない。