上下関係と主従関係

一時期、パワーポイントファイルやワードファイル、メールの打ち込みなど、ほぼあらゆるパソコン操作を職場の同僚に押し付けていた人がいた。最初の数年間の恩を返して貰っている気分だったようだが、同僚をただで使える。あなたのためになると言って、自分の副業のためのファイルまで制作させる。夜に自宅から同僚を呼び出して仕事を指示し、自分はスポーツジムに向かったり、帰宅したりする。翌朝までに指示内容は完成されている。しかも自分が指示した内容だからと、自分の名前のコピーライトを入れて憚らない。こんなに都合の良いことはない。

外の仕事をボランティアという。この人のボランティアは、割に合わない、という意味であって、無償奉仕という意味はない。貰っている額は決して、明かさない。毎年、確定申告をして、領収証を同僚から貰って経費を多く申告して喜んでいたが、幾ら還付されたかも言わない。

その関係はほぼ10年に渡った。その結果、その人は偉くなり、収入も増え、名声も得た。もう一方は、スキルがその人に特化してしまっており、お互いに当たり前と思っている関係になっていた。こうなると、従いついていく以外に選択肢がない心境になってしまう。

分業は一つの仕事を複数の人で分担すること。権限委譲は任せるついでに権限まで渡すこと。上下関係で望ましいのはこの二つがあるとき。押し付けは無理やりやらせること。押し付けていて、分業になっているのに、権限委譲はせず、自分の権益を維持する。これは主従関係に近い。こういう人にはなりたくないな、と横で見続けていて思っていた。

職場での上下関係は、主従関係とは異なるものだ。一緒に出世していこう、と勝ち馬になりそうな人に忠誠を捧げようとしても、主従ほどではない。そんな時代に、自分だけ得をしようとして、主従関係を強要することは、ハラスメント以外の何物でもないと感じる。もちろんこの二人は、今でもハラスメントがあったことは否定する。合意の上だったと言う。だから第三者の私が訴えることに意味も価値もない。でも、あれはパワハラとセクハラだったと今でも思う。